高齢者の貯筋運動トレーニングに関する国際フォーラム2012
The 2012 International Forum on Muscle Fitness Exercise as Chokin for Elderly People
貯筋国際フォーラム2012大会会長 挨拶


福永哲夫学長 福永哲夫(鹿屋体育大学・学長)

現代の日本社会においては,日常生活における筋活動が極めて少ない環境にあり,それらが「生活習慣病」の主要因であることが報告されてから久しい.日常生活における筋活動の低下は,骨格筋の萎縮,骨密度の低下あるいは脂肪の過剰蓄積を引き起こします.その結果,筋機能,動作パワー,持久性,あるいは疾病に対する抵抗力が減少し,肥満症,骨粗鬆症や心臓病の危険度が増してきます.そのような状態は,生活遂行能力「生活フィットネス」の低下につながり,さらには生産能力の低下を引き起こします.「生活フィットネス」は発育期に向上し,加齢に伴い低下します.筋力や持久力などの体力の加齢変化については,これまでに数多くの研究報告がなされてきておりますが,最近実施した我々の調査結果によりますと,加齢に伴う筋の量的および機能的変化は,身体各部位により異なります.  たとえば,腕などの上肢の筋は加齢変化が少なく,一方,下肢の筋は加齢とともに著しく萎縮します.加齢に伴う脚筋の萎縮と機能低下は歩・走あるいは椅子からの立ち上がりなどの生活動作の遂行能力の著しい低下を引き起こす原因となります.  一方,適切に処方された運動プログラムによって,筋量が増し,筋機能が向上する研究結果が数多く報告されております.しかしながら,従来の研究結果は実験室的に十分に管理された条件下で得られたものがほとんどであり,そこで処方されたプログラムの内容は,特殊なトレーニング機器による高重量負荷を利用しているので,家庭で実施することは困難である場合が多いと考えられます.そこで,われわれは,誰もが自宅で実施できる「生活フィットネス向上プログラム(貯筋プログラム)」を工夫し,その効果の検証実験を全国各地の高齢者を対象に実施した結果,筋が肥大し筋力が増加した結果を得ました.  本学では,こうした取り組みを「動ける日本人育成」を目指した「貯筋研究プロジェクト」として ,2009年度より大学を上げて実施してきました.特に,この3年間は文部科学省から特別経費の補助を受け,地元鹿児島県大隅半島を中心に全国各地での貯筋運動プログラムの普及と,そこでの科学的検証を行ってきました.  この度,これまでの最終的な研究成果を発表するため本国際フォーラムを企画したところです.外国からも研究者を招聘し,研究情報の交換とこれまでの研究成果について議論を深めていただけることを願っています.  最後に,これまでの研究プロジェクトの推進にあたりご協力いただいた関係機関や参加していただいた高齢者の方々に心より感謝申し上げますとともに,今後とも続く貯筋運動の普及振興にこれまで通りご協力いただけますようお願いいたします.

貯筋国際フォーラム2012実行委員会委員長 挨拶


川西正志副学長 川西正志(鹿屋体育大学・副学長)

この度,貯筋国際フォーラム2012においては,2009年度より本学独自で,そして,2010年より本年度までの3年間にわたり文部科学省の特別経費の補助を受けて展開してまいりました「動ける日本人育成をめざしたNIFSみんなの貯筋研究プロジェクト」(The Research Project of NIFS CHOKIN FOR EVERYONE:NICE)の事業及び研究成果を発表する機会となります.  本プロジェクトでは,近年大きな社会的課題である,日本人の体力・運動能力の低下現象に対し,子供から老人までの生活フィットネスアップのためのトレーニングプログラムを作成し,広く鹿屋体育大学モデルとして日本国内へ普及・振興を図ることであります.  そのための研究を福永哲夫学長を代表者とした組織を立ち上げ,総勢100名規模の研究者や大学院生で実施してきました.貯筋運動による高齢者への介入研究は生涯スポーツ実践センター,スポーツトレーニング教育研究センター,保健管理センター等の学内付属施設の協力体制のもと,学内のバイオメカニクス,運動生理学,解剖学,スポーツ医学,健康教育学,スポーツ心理学,スポーツ社会学,生涯スポーツ学等多領域にわたる学際的領域から研究アプローチしてきました.必要に応じて早稲田大学,東海大学,順天堂大学,女子美大などの学外からも研究者を招聘し,共同研究体制をとることで,国内的な検証スタンダードを構築し,同時に大学間研究体制ネットワークも確立してきました.プロジェクトには,各地の自治体の協力を得ながら実施され,研究プロジェクト終了後は自主的グループとして貯筋運動教室として継続してできるように,その為の指導者養成も実施してきました.  プロジェクトの全国展開には,公益財団法人 健康・体力づくり事業財団と連携し,全国25都道府県の総合型地域スポーツクラブで貯筋ステーションとして貯筋指導者の専門的トレーニングを受けた健康運動指導士を核に展開してきました.  今回のフォーラムを本プロジェクトの最終的なまとめの事業として位置づけ,この3年間の研究成果を発表いたします.諸外国の著名なこの分野の研究者を交え,活発な議論が展開できることを期待しております.

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